少年よ敗北を積み上げろ

会社に若者二人がいる。 片方は適当な高校を出て会社に入ってきた、 イケメンで器用な奴(以下イケメンとする)。もう一方はよく分からない専門校を 出た、見た目はぱっとせず不器用な男だ(以下不器用男とする)。

イケメンは作業(簡単な工事)をヤラせても持ち前の器用さで手早くこなす。 判断にしても自分の責務にならない程度にうまく決断するか上司に投げる。 日常業務にしても、厳しい先輩にたいしては怒られないように全部自分でやり、 使い物にならず会社でバカにされているような先輩に対しては仕事を投げてしまう。 今風に言う「空気の読める奴」である。
不器用君はというと、作業をヤラせれば「どうしてこんなに時間が掛かるの!?」 と驚くばかりの不器用さを発揮し、報告書を書かせても細々と書いてある割に 容量の得ない物ばかり。

こんな案配だから、上役連中はイケメンに期待しているようだが、 小生が思うに、より長く生き残れ、より業界で稼げるのは不器用君だと思う。 というのは、イケメンは恥をかかないように上手く渡っていく、すなわち 「恥をかかないように」という判断基準で仕事をしているが、 不器用君は怒られたり恥をかいたりの連続である。 これが後の人生の選択に関わっていくだろう。あくまで不器用君が 前に進む心を持っていればの話であるが。

そして数年も経つと実際に差が見えてきた。
イケメン君は上役の信頼を得て、色々な事を特別に教えてもらいながら 面白い仕事(自分の判断がいる仕事)を与えられ、それなりに楽しんで働いているようだが、 資格にほとんど挑戦しない。ボイラーの資格を受けるにも1年も準備するほど慎重に行う。
不器用君はというと、あいも変わらず不器用で怒られながら仕事をしているが、 資格は積極的に受けて受かったり落ちたりを繰り返しながらも、だいぶ増えてきた。
簡単にまとめると、イケメン君は今を楽しみ可能なことのみをこなしスマートな人生を謳歌している。 器用が上の人生の結果だろう。 不器用くんは沢山敗北しながらもどんどん未来に挑戦している。
もし不器用君が失敗を恐れていたら、仕事もダメで資格もないという情況になっていただろう。
イケメン君は大きな敗北なく生きてきたために、敗北するカッコ悪い自分を認められず、 ボイラーみたいな簡単な資格に一年も掛けることになる。結果として持ち前の能力 の中でしか生きられない上に、運や環境によってもたらされる敗北に弱い。
不器用くんは今までの人生で敗北に慣れていて恥を書くことをおそれないから、 自分の能力では際どいところまで挑戦できる。

不器用な人、才能のない人、人生うまく行っていない人は、 安心してどんどん失敗を積み重ねればいい。それが器用で人生うまく行っている人と比較して、 我々の数少ない強みなのである。 無論、そんな強みよりスマートに上手く人生をやる能力のほうが欲しいという気持ちはわかるが、 ないそでは振れないのだ。
失敗を積み重ね恥の上塗りをして、自分を「能力」という枠から開放してあげよう。



TOP    著作:ハゲおっさん 2013/02/09
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